家族問題研究学会Japanese Council on Family Relations


2011年度 公開シンポジウム「里親制度と家族のゆくえ」


 家族の多様化や脱制度化が進むこんにち、里親家族には新たな養育の可能性と課題が 生じています。里親家族には、里親と委託された子どもの関係だけでなく、里親と実 子(里親の血縁のある子ども)、委託された子どもと実親(血縁はあるが養育してい ない親)、実子と委託された子どもなど、さまざまな関係が生じます。「出生」と 「養育」という2つの課題は、親子とは何か、家族とは何かという問題と密接に関連 していますが、里親養育における複雑な家族関係は、このような議論に新たな視角を もたらします。
 本年3月の大震災により、両親を亡くした子どもが200名以上となりました。ほと んどの子どもが親族に引き取られ、現在、親族里親制度の活用が進められているとこ ろです。里親制度とそれを取り巻く家族と社会について問い直すことは、現在の日本 において喫緊の課題であると言えるでしょう。本シンポジウムでは、里親の実践にか かわってこられた当事者(里親・実子)や専門家を招き、我が国における里親養育の 現状と問題点をふまえて、里親制度と家族、社会のゆくえを考えたいと思います。

日時:2011年8月6日(土) 14:00 〜 17:00
会場:慶応義塾大学三田キャンパス東館6階G-SEC Lab(参加費:無料)
主催:家族問題研究学会  共催:慶應義塾大学 G-COE CGCS

司会:田渕六郎(上智大学)・苫米地伸(東京学芸大学)
討論者:野辺陽子(東京大学大学院)

報告者1:林浩康(日本女子大学)
報告題目:「子ども虐待の援助過程におけるインフォーマル資源の活用―ファミリーグループ・カンファレンスと親族里親の可能性」
要旨:現在里親委託率が比較的高い一部の諸外国において、ファミリーグ ループ・カンファレンス(以下、FGC)等の当事者参画を意図したミーティングの開 催と親族里親の活用が促されている。それは専門職のみという限られた出席者だけの ミーティングや意思決定には限界があり、より多くのファミリーグループの参画が、 結局専門職の意思決定や判断の強化を促すという考え方によるものである。また子ど もが身近なところで過ごすことの重要性が再確認されたことで、その活用を促すため にそうした担い手となる親族の出席を促す必要性が意識化されたといえる。報告で は、FGCの基本的概念や内容、および諸外国における親族里親の評価を通してそれを 俯瞰し、日本でのそのあり方について検討することとする。

報告者2:山中ゆりか(里親)
報告題目:「傷ついた心に寄り添う」
要旨:少子高齢化が続いている私たちの国で、大切に育てられる子どもがいる一方、 虐待等で児童養護施設や里親宅で生活する子どもが後を絶ちません。私は、この20年 里親として子育てをしてきました。大変な経験もしましたが、里親になって良かった という思いもあります。はじめは海の物とも山の物とも思えないほど混沌とした子ど もが、成長し信頼関係ができると変わるからです。
 今年の大震災後、<絆>という言葉が目をひきます。核家族化が進み個人主義にな りがちな日本で、大切なものをもう一度考える機会が与えられていると思います。人 はひとりで生きていくことはできません。人を人として大切に思う気持ちが絆を深 め、たとえ血の繋がらない親子であっても家族として絆を育んでゆける話をしたいと 思います。

報告者3:横堀昌子(青山学院女子短期大学)
報告題目:「家族とは、家庭とは―里親家庭の実子として暮らした日々を通して」
要旨:我が国は、国際的動向を受け、社会的養護を要する子どものケア方針 として、家庭的な養護・養育推進に今大きく舵を切っている。筆者もそのような流れ の中、里親委託の推進や里親支援の実践と研究に、子ども家庭福祉とソーシャルワー クの立場から携わっている。  ただし今回は研究者である前に、里親家庭の実子として子どもたちと育ちあった体 験をもつ者として登壇する機会をいただいた。そもそも児童養護施設職員の実子とし て入所児と子ども時代をともにした幼少期、両親が施設を退職しグループホームを設 立する中で里親家庭となり、以後多くの子どもを受託した暮らしに参加した十代以降 の日々、施設ケアと里親養育の質的な違いを感じながら養育に参加した日々を改めて 思い起こしている。そこで、いくつかのエピソードを通し、里親養育の中で生まれる 関係性、家族・家庭とは何か、多彩な家族を包含する社会の諸問題をめぐって抱えて きた思いや問いを報告したい。


 

      

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