大会

2025.07.20大会

2025年度家族問題研究学会大会

2025年度家族問題研究学会大会を、7月20日(日)に下記の通り開催します。多くの皆様のご参加をお待ちしています。


① 概要

・日時:2025年7月20日(日)10:30開場、11:00開始

・場所:明治学院大学白金キャンパス高輪校舎(15号館)

https://www.meijigakuin.ac.jp/access/

https://www.meijigakuin.ac.jp/campus/shirokane/


※会場の高輪校舎(15号館)は、白金キャンパスから徒歩5分ほどの場所にある独立した建物(マップ上の7番)です。


・参加費:会員・非会員とも無料

・参加手順:会員・非会員ともに事前登録が必要です

※事前登録の方法は下記の通りです。 以下のリンクより登録用フォームにアクセスして必要事項をご記入の上で回答を送信してください。今回は、会場の都合で、学会大会参加者の方には高輪校舎の入口に設置する受付デスクで事前申し込み者であることをチェックする予定です。必ず事前申し込みをして、当日の受付で学会大会参加者である旨をお声がけください。

https://forms.gle/s9wqeZn8mPJ1PM3P8


・資料の配布方法:

7月16日(水)までに事前登録された方には配布資料へのアクセスについて後日メールにて連絡いたします。また、オンライン参加用のURLも併せてお知らせします。7月16日(水)以降に登録された方には、それぞれフォームよりお知らせする予定です。なお大会会場ではゲスト用のWi-Fiアカウントを発行しますので、持参されたノートパソコンやタブレットに資料をダウンロードすることもできます。大会当日に紙での配布はいたしませんのでご注意ください。


・スケジュール

10:30:開場

11:00-12:30:自由報告部会

12:30-14:00:昼食・役員会

14:00-17:00:シンポジウム

17:00-17:30:総会


② プログラム

■自由報告部会(11:00-12:30)


・第1部会 司会:藤間公太(京都大学)

報告者1:三品拓人(筑波大学)

報告題目:「親を頼ることができない」児童養護施設経験者にとっての「祖父母」――インタビュー調査から

要旨:本報告の目的は、児童養護施設経験者が祖父母といかに交流していたのか、インタビュー調査より明らかにする。そのために「親を頼ることができなかった」3人の当事者(20代・男性)に焦点を絞って語りを用いる。語りからは、親がいないときに親代わりとなって養育を行っていること、児童養護施設に入る/入らないという瀬戸際、あるいは施設を退所した際、祖父母宅が「逃げ場」、「生活の場」になっていた様子が浮かび上がる。

親にとって育児サポートとしての祖父母には注目が当たるが、本報告ではこれまで着眼

がされてこなかった親がいるが(理由があり)育児ができない場合の祖父母の役割につい

て考察を行いたい。


報告者2:森田友華(株式会社メタフォー)・小西凌(三重大学)

報告題目:新聞に見る「教育虐待」の可視化――KH Coderを用いた共起ネットワーク分析から

要旨:本研究は、「教育虐待」という語が新聞報道においてどのように扱われているかを明らかにすることを目的とし、朝日新聞の記事を対象にテキストマイニングを行った。教育虐待は親の過剰な期待や過干渉によって子どもに心理的・身体的負担を与える行為とされ、近年その認知が広がりつつある。しかし、その注目度の高まりとともに、具体的な定義や範囲は曖昧さを増しつつある。こうした中で、新聞報道が教育虐待をどのように描き、社会に伝えているかを客観的に把握することは重要である。当日の報告では、KH Coderを用いて、新聞における「教育虐待」の語られ方を可視化することで、その言説の特徴や背景にある価値観について議論を深めたい。


報告者3:堀内翔平(京都大学大学院)

報告題目:個人化時代における共同生活のイメージ――「非家族による共同生活」を描いたテレビドラマを事例に

要旨:戦後、テレビドラマは家族イメージの形成に寄与してきた。それに対し本報告では、家族の個人化が進行する現代において、「非家族による共同生活」のイメージがどのように形成されてきたのかを解明することを目的とする。個人化が進行したとされる90年代以後の、非家族による共同生活を描いた作品(『アフリカの夜』『すいか』『ホームドラマ!』『ラスト・フレンズ』など)を事例に取り上げ、作品の内容、雑誌による特集、批評家による批評をもとに、それらの作品における共同生活のイメージを分析する。分析にあたっては、それらのイメージが家族といかなる関係にあり、いかなる社会関係を生成しうるのかを視点とする。


・第2部会 司会:菅野摂子(東京科学大学)

報告者1: 長船亜紀子(千葉大学大学院)

報告題目:シングル女性農業者のリプロダクティブ・ライツと家族形成

要旨:本研究の目的は、親族継承意識が根強い農家で、実家を継いだシングル女性農業者のリプロダクティブ・ライツの実態を検証することである。青森県内のシングル女性農業者 10 名を対象に、聞き取り調査を実施した。対象者は、家族から「「家」のために、婿取りと出産を強く促されていた。一方で対象者自身は、結婚・出産を前提に要請される性別役割分業に忌避感を抱いていた。結果、①家族が固持する家意識は、対象者たちの家族形成へのアスピレーションを冷却していた、②女性農業者たちは後継者の地位を獲得したことで、家族が想定してこなかったリプロダクティブ・ライツを行使し世襲制脱却をめざしていた、という 2 点が明らかになった。


報告者2:Liu Chenyu(一橋大学大学院)

報告題目:人民公社時代を生きた中国農村部の「娘」たちの経験――家族内の役割と資源配分を手がかりに

要旨:本研究は、1950年代~1960年代に生まれ、女性の社会進出が大きく打ち出された計画経済時代に少女期を過ごした中国人女性を対象とする。

 計画経済期の公共領域では「鉄の娘」というイメージが誕生し、女性は男ができるあらゆることをすることができるのだということを表現したものである。「鉄の娘」は、その時代の若い女性の理想像・象徴として広く位置づけられたのである。

 こうした国家にとっての「鉄の娘」たちは、家族内においてはどのような「娘」としての生を送り、どのような経験をしてきたのかに着目する。と同時に、当時多子家庭に生きた彼女たちにとって、きょうだい構成もまたライフコースに大きな影響を及ぼしていたことに注目する。


報告者3: Liu Jia(お茶の水女子大学大学院)

報告題目:「家族」とは何か――現代中国社会における「家族」概念に関する文献レビュー

要旨:本報告は、現代中国社会における家族概念の再定義と多様性について文献レビューを通じて明らかにする。中国の家族は、儒教的倫理や戸籍制度に根ざし、欧米の家族と異なる固有の文脈を持つ。人口移動、少子高齢化などの要因により、伝統的基盤が揺らいでいる。

 家族形態の多元化が進む一方で、戸籍制度に基づく法的・制度的「家族」定義との乖離が拡大している。個人主義的価値観の台頭は、結婚・出産の自由を広げながら、家族の機能に新たな緊張をもたらしている。中国の家族が固有の文化的遺産と現代的諸力が交錯するダイナミックな場として再構築されている。


■シンポジウム(14:00-17:00) 

テーマ:家庭教育を問う


趣旨:家庭教育は長らく学校教育の中で推奨されてきた。そこでは、子どもによる「お手伝い」や家族間の「お世話」はもちろん、「親を大切にする意識」の涵養など、規範的な価値観までもが広く推進されてきた。しかし、こうした家庭教育の推進は、必ずしも現代社会における家庭の多様性や、各家庭が持つ背景や事情を十分に考慮してきたとは言えない。一方で、社会学やその隣接領域においては、多様な家庭のあり方を実証的に捉える研究が蓄積されてきており、家庭を取り巻く状況の多様性やその社会的背景にも理論的に焦点が当てられてきた。そこで本シンポジウムでは、これまでの家庭教育のあり方を再検討し、社会学的な視点から「家庭教育」とは何かを問う。多様化する家庭の現実を踏まえつつ、新たな家庭教育の方向性を考える機会となれば幸いである。

 本シンポジウムでは登壇者として、ジェンダー等の社会的視点から子どもの「お手伝い」を対象とした実証的研究を精力的に行っている戸髙南帆氏と、生活保護世帯をはじめとした貧困世帯の子ども・若者のライフストーリーを中心に研究を展開し、社会的格差や排除の問題にも積極的に取り組んでいる林明子氏をお招きしてご報告いただく。また指定討論者には知念渉氏と荒牧草平氏をお招きし、それぞれのご専門の立場からコメントをしていただく。


司会:須長史生(昭和大学)

討論者:知念渉(大阪大学)・荒牧草平(大阪大学)


第1報告:戸髙南帆(東京大学大学院)

報告題目:家庭における子どもの「お手伝い」の実態とその背景

要旨:家庭で「お手伝い」をさせることは、自己肯定感や自律性、道徳観や責任感をはぐくむとして、子どもの学校の宿題になることがある。しかし、女性の高学歴化が進み、専業主婦世帯が大きく減るなど、家庭のあり方が変わりつつある現代社会において、子どもの「お手伝い」がおかれている状況は様々である。これまで、女子が男子よりも「お手伝い」の頻度が高いというジェンダー差の存在は一貫して報告されてきたが、子どもの「お手伝い」がなされるメカニズムについて、多様化する家庭に焦点をあてて研究がなされることは少なかった。親が子どもに家事を教えることについても同様のジェンダー差がみられており、教える側の親や、教わった子どもの性別役割分業意識とも関連しているとされる。ほかにも、きょうだいの数や親の学歴など、「お手伝い」の中心的な実践の場となる家庭に注目して、近年のその実態と背景を量的調査データから検討する。


第2報告:林明子(大妻女子大学)

報告題目:生活保護世帯の子どもが経験する家庭生活と家庭教育

要旨:文部科学省は「学校・家庭・地域の連携・協働」を推進し、「家庭はすべての教育の出発点」として家庭教育支援に力を入れている。しかし、学校現場では「平均的な家庭」や「一般的な子ども像」が想定されやすく、家庭との連携もそうしたモデルに沿って進められる傾向にある。その結果、多様な家庭背景や価値観は考慮されにくくなる。たとえばヤングケアラーのように日常的に家事や介護を担っている子どもは、「お手伝い」を前提にした家庭教育は現実と乖離しており、疎外感を覚える可能性がある。また貧困世帯の子どもも、学校で当然とされる家族のフォローや家族関係に実際とのギャップを感じ、困難や戸惑いを抱えることがある。

 本報告では、生活保護世帯で育った若者を対象としたインタビュー調査を通じて、彼らが学校でどのような経験をし、それが家庭生活とどのような乖離があったのか、またその状況にどのように対処してきたのか、さらに当時の担任や家族に対してどのような思いを抱いていたのかを明らかにする。彼らの語りを手がかりにして、学校が前提とする家庭生活や家族関係を問い直しながら、学校で繰り返される家庭教育の今後の方向性についても検討したい。