大会

2018.07.14大会

2018年度家族問題研究学会大会

日時:7月14日(土)11:30~17:30

会  場 : 日本女子大学目白キャンパス香雪館(201教室)

(JR山手線「目白」駅から徒歩15分、副都心線「雜司が谷」駅から徒歩8分、有楽町線「護国寺」駅から10分、 詳しい地図は、https://www.jwu.ac.jp/unv/about/building/campusmap.html#anchor_01を、ご参照ください。)

      (参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)


■スケジュール

11:00 ~ : 受付開始

11:30 ~ 12:30: 特別セッション

12:30 ~ 14:00: 昼食・役員会・シンポジウム打ち合わせ

14:00 ~ 17:00: シンポジウム

17:00 ~ 17:30: 総会


■特別セッション(11:30 ~ 12:30)

司  会 :松木洋人(大阪市立大学)


報告者1:池岡義孝(早稲田大学)

報告題目 :「有賀・喜多野論争を再考する」

要  旨 : 戦後日本の家族社会学が確立した1960年代には2つの重要な論争があった。一つは核家族論争で、 核家族論に反対した山室周平の先見性が近年でも取り上げられることがある。それに対してもう一つの有賀・喜多野論争は、 近年、家族社会学の領域では少数の例外を除いて取り上げられることはなく、その名称こそ有名なものの忘れられた論争になりつつある。 本報告は、日本の家と家族をめぐって交わされたこの論争に新たな角度から光を当てる試みである。 なお、本報告は2017年に発表した2つの論考、「喜多野清一の農村社会学への道程」岩上・池岡・大久保編『変容する社会と社会学』(学文社)と、 「家族社会学における『小さな世帯』」『社会保障研究』Vol.2 No.1をもとにしている。

報告者2:山田昌弘(中央大学)

報告題目 : 「「子どもにつらい思いをさせたくない」:少子化問題のアジア的特徴について」

要  旨 : 日本の少子化対策が失敗してきた原因は、欧米社会の慣習や価値観を日本にも当てはまる物として 前提してきたのが大きな原因である。日本や他のアジア諸国では、「子どもにつらい思いをさせたくない」という意識が強いため、 少子化が起きる。そのため、欧米のような女性の両立支援は、少子化対策としてはあまり効果がない。


■シンポジウム(14:00 ~ 17:00)

テ ー マ : 「認知症と共に生きる経験とケア実践:地域包括ケアシステム構築にむけての課題を洗い出す」

趣  旨 : 認知症に関する国家戦略を掲げている国々では、認知症がある人のニーズや自己決定を尊重し住み慣れた地域での生活を支えていくことが、政策の基本的な達成目標となっている。現在、日本でも、団塊の世代が75歳以上となる2025年にむけて、認知症がある場合も含み重度の要介護状態であっても住み慣れた地域で生活できるよう、住居・医療・介護・予防・生活支援等を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築が目指されており、家族も地域生活の場・支え手として位置づけられている。 しかし、その実現にむけては様々な課題が浮上している。実際には、家族が地域社会において認知症高齢者を支える第一義的な役割を担うことが期待されており、他方、認知症高齢者や家族を支える地域資源が未だ脆弱であることなどを背景に、家族が行動心理症状(BPSD)への対応に疲弊し、結果として、認知症高齢者の地域生活の継続は困難との結論に至りやすいことが指摘されている。また、家族や地域の人々、専門家などの支援者が、認知症者の経験にどのように寄り添いうるかという問いもある。ともに地域で暮らすということは、認知症と共に生きる人々の生やその意味を専ら了解不能なものと位置づけ排除するのではなく、むしろ豊かな意味を携えた生きられた経験として捉えながら社会関係を築き営んでいくことを示しているとも考えられる。 よって、認知症と共に生きる人々を地域でケアするということや認知症と家族ケアの諸相や課題などについて議論し、これらのこととの関連から地域包括ケアシステム構築に向けての課題について改めて議論しておくことには充分意義があるものと考えられる。すなわち、「家族」や「地域社会」などの視点から認知症ケアのあり方や地域でのケアの仕組みについて問い直すことである。 そこで、本シンポジウムでは、看護学・現象学の立場からケアのあり方を積極的に問い続けている西村ユミ氏と豊富なフィールド調査に基づき認知症の家族ケアについて研究を行っている社会学者の井口高志氏を招き、それぞれの立場から、認知症高齢者を地域で支えるということ、認知症ケアと家族についてご報告いただく予定である。


司  会 : 南山浩二(成城大学)・大日義晴(日本女子大学)

討 論 者 : 菊池真弓(いわき明星大学)・藤崎宏子(元お茶の水女子大学)


報 告 者1: 西村ユミ(首都大学東京)

報告題目 : 「認知症をともに生きる人々の経験と課題」

要  旨 : 地域包括ケアシステムの実現をめざし、「受け手」と「支え手」が分離した社会から、 全ての人々が住み慣れた地域で暮らし、生きがいをともに創る「地域共生社会」の構築が進められている。 しかし実際に、この実現は容易ではない。とりわけ認知症を生きる人々やその家族は、 こうした社会の中にあっても、様々な課題を突きつけられている。課題は、暮らしている地域や自治体によって、 あるいは関係する専門職や家族、知人の存在によって異なってもいる。他方で、この課題を、 新たな価値観のもとで組み換える動きもみられる。例えば、「徘徊」は「外出」であるとし、 「家族支援」ではなく「家族以外の複数のパートナー」とともに支え合うことを、 認知症者や家族・パートナーたちが提唱して、新たな社会を作り上げようとしている。 これまで課題であったことを、見方や言葉を変えることで、別様に理解し直しているのだ。 あるいは課題と思われていたことを、認知症者やその家族に帰属するのではなく、 多様な人々へと拡張していこうとする。認知症とともに生きる人々が、こうした社会状況や活動の中で、 いかなる経験をしているのかを、考察することで、社会が持つ課題を考察したい。

報 告 者2: 井口高志(奈良女子大学)

報告題目 : 「認知症経験の変容と相互行為:新しい認知症ケア時代の社会学」

要  旨 : 本報告では、まず「新しい認知症ケア」あるいは「ポスト診断の時代」における認知症概念、 および認知症ケア概念の特徴を明確にし、そうした時代下での本人、 家族、支援者の間の認知症をめぐる特徴的な相互行為について検討した筆者のいくつかの研究を紹介する。 その上で、現在の認知症ケア実践および研究において考えるべき課題を明示したい。具体的に取り上げるのは、 初期・中期の認知症の人を主たる対象とし、若年性認知症支援に力を入れていたデイサービスAへのフィールドワークに基づく研究と、 レビー小体型認知症サポートネットワークにおける参加者(主に家族介護者)と支援者の質疑応答データの分析である。 それらの分析を踏まえて、認知症の初期段階の課題に焦点が当てられていく中で、 認知症と共に生きていくプロセスを考えるべきことの重要性と、そのプロセスを考えていく上での論点について示したい。