例会
2019年度 例会
2019年度第三回例会(新型コロナウイルスの影響を考慮し中止)
日 時 : 2020年3月7日(土)14:00~16:00
会 場 : 成城大学3号館3階大会議室
(参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)
報 告 者:下夷美幸(放送大学)
報告題目:日本の家族と戸籍――なぜ、「夫婦と未婚の子」単位なのか
報告要旨:戸籍は、「人の出生から死亡に至るまで」、すなわち、「個人」の生涯にわたって、その親族関係を登録、公証するものである。 つまり、戸籍は個人の一生の公式記録であり、個人の身分証明書といえる。しかし、戸籍は個人ではなく、「夫婦と未婚の子」を基本単位として作られる。 このような家族単位で編成される戸籍制度が、戦後日本の家族規範に影響を与えたのではないか。家族単位の成立とその作用を捉えてみたい。 戦後の戸籍法改正で、なぜ個人単位ではなく、「夫婦と未婚の子」単位が選択されたのか。民法・戸籍法改正案の起草委員・幹事の回想録を手がかりに探っていく。 そして、成立した「夫婦と未婚の子」単位の制度の下で、人々はどのように戸籍に囚われてきたのか。新聞の「身の上相談」記事からみていく。 これらの素材を提供することで、戸籍から日本の家族について議論する機会となれば幸いである。 (参考文献:下夷美幸『日本の家族と戸籍――なぜ、「夫婦と未婚の子」単位なのか』東京大学出版会、2019年)
討 論 者:本多真隆(明星大学)
司 会:南山浩二(成城大学)・松木洋人(大阪市立大学)
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2019年度第二回例会
「博士論文執筆までのロードマップ:2018年度博士課程修了者の体験談から」
日 時 : 12月15日(日)14:00~
会 場 : 日本大学桜上水キャンパス 3号館・3204教室
(参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)
企画趣旨 :分野によって違いはあるものの、近年では博士論文を標準年限である3年で取得することへのプレッシャーが強まりつつある。 実際に3年間での博士号取得がどのくらい存在するのか、どの程度程度現実的なのかは別として、 こうした早期学位取得への圧力は従来の博士課程ないし博士後期課程における教育のあり方に影響を及ぼすと同時に、 博士号を目指すドクターの大学院生にとってもより精緻な計画や戦略が求められるようになっている。 とはいえ、近隣分野に多くの大学院生を擁する一部の大学院を除き、こうした博士号取得にむけた計画や戦略、 すなわち博士論文執筆までのロードマップについて、先輩の体験を共有できる機会は限られているようにみえる。 ご存じの通り、同じ大学院の先輩後輩であっても必ずしも風通しが良い関係とも限らないので、 こうした体験の共有は一段広い学会や研究会などを通じて行うことに実益があるのではないかと考えられる。 そこで、2019年度家問研秋のワークショップでは、直近の2018年度末に博士号を取得して大学院を出たお二方に登壇していただき、 修士論文執筆後から博士号取得までの間、どのような方針のもと、どのようなスケジュールで、 ときに予期せぬ事態にどのように対応しながら研究活動を行ってきたのかをお伺いしたい。 とりわけ、修士論文をどのようにその後の投稿論文、博士論文に結びつけたのかといった研究上の経験のみならず、 調査費用に加えて学費や生活費の捻出、家族など私生活との折り合いといったプラベートとの接点などについても聞いていきたい。 昨年度のワークショップに続き、今年度もなるべく質疑の時間に多くを割くことで、登壇者のみならずフロア間での情報共有も行いたいと考えているので、 博士論文の執筆を目指す多くの大学院生、OD、PDに参加して欲しい。
話題提供者 : 大森美佐(東京家政大学・助教)
麦山亮太(学術振興会特別研究員(PD)・一橋大学)
コメンテーター: 米村千代(千葉大学)
司 会 : 久保田裕之(日本大学)・宮坂靖子(金城学院大学)
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2019年度第一回例会
日時:2019年5月11日(土)14:00~
会 場:日本大学桜上水キャンパス3号館4階3408教室
(参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)
司 会 :阪井裕一郎(福岡県立大学)、佐藤宏子(和洋女子大学)
報告者1:金 兌恩(東京大学大学院)
報告題目:高齢期の家事分担からみるジェンダー格差の実証研究
要 旨:本研究は、高齢夫婦の家事分担から高齢期のジェンダー格差を検討することである。 そのため、高齢期における家事分担の現状を検討し、家事分担に影響を及ぼす要因を男女ことに分析した。 分析の結果、①高齢期における家事分担は男女不平等であること、②不平等な家事分担に影響を及ぼす要因にも男女差があることを明らかにし、 ③同じ要因でも男女間で及ぼす効果は異なることが判明した。これは、男女の権力における不平等な状況を意味し、 そこからジェンダー格差が生まれることを意味する。
コメンテイター:中西泰子氏(相模女子大学)
報告者2:三塚 悠(日本女子大学大学院)
報告題目:父子家庭研究を問い直す
-シングルファーザーの語る婚姻中の性別役割分業意識を手掛かりに-
要 旨:本研究では、シングルファーザーはどのような人物なのか、どのような生活を送っているのかを明らかにするため、 インタビュー調査を行った。通説では、父子家庭になり夫婦における性別役割分業が成立しなくなったことで困難を抱えるとされていた一方で、 本研究では、シングルファーザーの婚姻中の性別役割分業意識は多様であり、必ずしも通説が通用しないということが明らかになった。 父子家庭研究において現在の暮らしについての調査だけではなく、婚姻中の暮らしに着目する必要性が導かれた。
コメンテイター: 藤間公太氏(国立社会保障・人口問題研究所)
報告者3:夏 天(慶應義塾大学大学院)
報告題目:中国における子ども期の親不在の研究
-教育アスピレーションに関する分析を中心として-
要 旨:親の不在が子どものライフコースに与える影響についての研究は、アメリカや日本において、 「家族構造」による不利を中心に蓄積されてきた。中国では両親、あるいは片親が仕事のために主に都市部に移住し、 戸籍所在地に残され、親と一時的な別居を経験している子どもが多数かつ広範囲に存在している。この子どもたちは「留守児童」と呼ばれ、 中国では特に農村部の「留守児童」の教育や社会化の問題が指摘されている。本研究は、 親との一時的な別居が子どものライフコースに与える影響を明らかにするため、 中国の大規模社会調査である「China Family Panel Studies(CFPS)」の2010年のデータを用い、 先行研究で明らかにされてこなかった親の一時的な不在が子どものメンタルヘルスや教育アスピレーションへ及ぼす影響、 およびそのメカニズムについて検証する。
コメンテイター:久保桂子氏(千葉大学)
報告者4:李潤楚(お茶の水女子大学大学院)
報告題目:「家庭暴力」の言葉の出現に対する探求とレトリック分析
-CNKIの文献調査に基づいて-
要 旨:本研究は、中国における「家庭暴力」という言葉をめぐるテキスト分析を行った。 研究範囲を語の登場から2001年(『婚姻法』改正)までの時期に絞り、CNKIデータベースにおける「家庭暴力」の検索結果(1679篇)を研究対象とし、 手作業のメモ付・コード付けに基づいて研究を展開した。本稿を通じて、「家庭暴力」を使用していた作者の身分、 媒体の性質、言葉の語意変化ないし家庭暴力という社会問題の構築過程、社会問題のレトリックなどの問題を、多面的に考察してみた。
コメンテイター:施利平氏(明治大学)