例会

2019.03.03例会

2018年度 例会

2018年度第三回例会

日時:2019年3月3日(日)14:00~16:00

会  場:日本大学桜上水キャンパス3号館3階3308教室

(参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)

司  会 : 松木洋人(大阪市立大学)


報告者1: 税所真也(東京大学)

報告題目 : 「成年後見の社会化と家族への影響」

要  旨 : ケアの社会化は、年金制度を通した扶養の社会化、介護保険制度を通した介護の社会化と段階的に進展してきた。 そして、ケアの管理・調整機能やケアにかかわるマネジメント責任をいかに社会化するかが、残された課題として認識されてきた。 本報告では成年後見制度の利用によって家族に課される労働と費用に焦点を当てて議論する。 本人が認知症高齢者等であり、成年後見制度を利用し、第三者が後見人となる場合、ケアの管理やマネジメント責任は社会化される。 ただしこれには家計の社会化をともなう。成年後見を通した家族の家計管理のあり方が問題視され、成年後見の専門職化が進んだ。 これによって生じた、家族の生活と家計への影響と変化について紹介する。


報告者2: 鵜浦直子(大阪市立大学)

報告題目 : 「成年後見人等による援助に対する家族の影響」

要  旨 : 成年後見制度は被後見人等の法律行為を援助する制度であるが、その援助には被後見人等本人の意思が尊重されなければならない。 しかしながら、実際には、家族の意向や福祉関係者、近隣住民などを含めた地域の意向、社会の状況も成年後見人等による援助に大きな影響を与えることになる。 なかでも家族は、最も成年後見人等による援助を左右する存在であるといえる。ここ数年、成年後見制度の動向においては、成年後見人等に対して被後見人等に対する意思決定支援が問われるようになっている。 そこでの議論も踏まえ、本報告では、成年後見人等による援助にあたって、家族がどのように影響を与えているのかについてその実際と課題について述べる。


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2018年度第二回例会

日時:12月1日(土)14:00~17:00

会場:日本大学桜上水キャンパス3号館3階3308教室

(参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)

司会:久保田裕之(日本大学)

「若手研究者のための家族社会学系論文投稿に向けたワークショップ」

企画趣旨 :指導方針によって幅があるとはいえ、社会学とりわけ家族社会学分野で博士(後期)課程に進学したあとの重要なタスクは、 多くの場合、修士論文をもとにした投稿論文の執筆だと思われる。これは、幸運にも修士論文を満足のいく形で書き切って高い評価を受けた人でも、 ぼろぼろになりながらほうほうのていでなんとか走り終えた人にも、同様に立ちはだかる関門であろう。 しかし、一般に学位取得にかかわる修士論文に求められる研究の幅や深さにくらべて、約2万字でコンパクトな論証を求められる投稿論文の執筆の間には、 少なくない違いがあると考えられる。たとえば、分量のみならず論文の構造や論証に割ける紙面の割合、執筆のルールや査読プロセス、 リプライや修正の手続きなど、そこには、長距離走と短距離走のように使う筋肉の違いや、よく似た別のゲームのルールのような差異があり、 この差に戸惑い、十分に適応できず、なかなか論文を投稿できない、それ以前に最後まで書き上げられないという相談を受けることも少なくない。 同時にまた、投稿数の減少や掲載率の低迷といった状況は、学術雑誌を発行する学会の側にとっても重要な課題である。 院生会員を含む若手会員が修士論文から投稿論文の執筆へと適応することは、投稿論文の質の向上や、査読プロセスの実質化、 掲載される論文数の増大などを通じて、各学会、ひいては日本の家族社会学全体にとっても有用であると思われる。 もちろん、これは院生を含む若手会員に偏りがちな論文投稿を、より広い職位や年齢層に広げていくためにも、投稿の実態や査読プロセスに光を当てていく必要がある。 そこで、家族問題研究学会では、かねてから博士(後期)課程進学者による修士論文報告会の開催などを通じて研究者キャリアのスタート支援を行ってきたが、 これに加えて、論文の執筆・投稿に関するワークショップを開催してみたい。具体的には、家族社会学分野を代表する主要な学術雑誌の編集長を経験してきた複数の会員から、 現在の論文投稿をめぐる現状を聞き、具体的に査読・編集プロセスでどのようなことが問題になっているのかを明らかにしてもらうとともに、 投稿経験者からの不満や問題の提起を行いってもらい、併せて、どのような点に注意することでよりよい投稿論文の執筆が可能になるのかを議論したい。

話題提供者:木戸功(聖心女子大学):元『家族研究年報』(家族問題研究学会)編集委員長)

池岡義孝(早稲田大学):前『家族社会学研究』(日本家族社会学学会)編集委員長)

山根真理(愛知教育大学):前『家族関係学』(家政学会家族関係学部会)編集委員長)


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2018年度第一回例会

日時:2018年5月19日(土) 14:00~16:30

会場:早稲田大学戸山キャンパス36号館6階681教室

(参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)

司会:宮坂靖子(金城学院大学)


報告者1:染谷 莉奈子(中央大学大学院)

報告題目:「障害者総合支援法以降の知的障害者家族研究-高齢期知的障害者家族の親子関係における母親の"離れ難さ"」

要  旨:本研究は、親の"離れ難さ"のメカニズムを解明することを通して、 2013年障害者総合支援法以降の高齢期知的障害者家族の親子関係を明らかにする。 対象とする知的障害当事者の自立が「親亡き後」直前まで先延ばしにされるという傾向について、 従来の研究では制度整備の不備によるものであると制度論的解決が模索されてきた。 しかし議論の末、実際に成人した重度知的障害者の親元からの自立が制度上可能になったにもかかわらず、 なおも大多数の当事者が親と同居し続けているという現状がある。この研究課題に関して、 本研究では親子関係に着目し、家族社会学の先行研究を踏まえ「自立の先延ばし」に対する解決を与えることが本研究の狙いである。


報告者2:陳 予茜(明治大学大学院)

報告題目:「現代中国におけるジェンダー表象---公共圏と親密圏の分析を通して---」

要  旨:現代中国においては大きな政策が打ち出されるたびに、その政策が中国社会に影響を与え、 場合によっては社会全体を激変させるまでの力を持つこともある。そのため中国のジェンダー表象は、 時間的と空間(公共圏と親密圏)的な連続性を持つ一方、不連続な部分も多いことが推察される。 本論は現代中国を三つの段階に分け、各段階の公共圏と親密圏に関連する政策を分析し、現代中国のジェンダー表象はいかに構築されてきたかを論じる。


報告者3:山崎 智慧子(一橋大学大学院)

報告題目:「婚姻はいかに変わるのか―国際結婚事業を行った自治体に着目して―」

要  旨:地域社会の配偶者選択は戦後どのように変化したのか。地域に暮らす個人はその変化をいかに経験しているのか。 本研究は国際結婚が新しい選択肢として選択されていった地域に焦点を当て,①調査地の広報誌の婚姻欄から地域における婚姻の範囲と時期の関係の考察, ②国際結婚をした男性が国際結婚を選択するまでの語りの分析を行った。 結果,調査地においては1970年代末ごろまで婚姻の時期と範囲が地域の産業構造に影響を受ける様相が明らかになった。 また,婚姻が生じる範囲は1970年代の初めまで拡大の傾向が生じていたが,1989年からはその範囲がやや縮小してゆく傾向が存在しており, 本調査地では,婚姻が発生する範囲が縮小していった時代と,範囲の面では大きく広がったように思われる国際結婚が同時代に生じていることを明らかにした。 こういった地域における婚姻の時代背景のもと,1980年代の後半と2000年の前半に国際結婚をした男性の語りからは, 自らが長男であることと「同居,家族の扶養,家屋・財産の継承」を強く結びつけて引き受け,加齢によって「継承」の部分を強く意識したのち, 「範囲にこだわっている場合ではない」という認識から次第に国際結婚を検討していったことが明らかになった。


報告者4:ウヤンガ(中央大学大学院)

報告題目:「内モンゴル農村地域におけるモンゴル族男性の結婚難問題に関する研究――通遼市ホルチン左翼後旗の7つの村を中心に――」

要  旨: 1980年代中国の男女出生比がアンバランスだった影響もあり、今日に至っては結婚適齢期の女性不足問題や男性の結婚難を引き起こしている。 男女比がアンバランスな結婚市場でも、特に交通が不便であり経済発展が遅れている貧困農村地域の男性はさらに結婚相手が見つかりにくい状況にある。 それにより晩婚や一生独身で残される可能性は必然的に高くなっている。 内モンゴルの農村地域でも結婚難問題が存在しているが、それに関する先行研究はあまり存在せず、 結婚難の要因を当事者である未婚男性たちに還元することが多い。 そこで、本論では内モンゴル農村地域のモンゴル族男性の結婚難問題の要因及び他の地域の結婚難問題の要因と違った特徴を明確にし、 それを人々に認識してもらうことを目的としている。 本論では、モンゴル族男性の結婚難問題の要因を明らかにするために内モンゴル通遼市のホルチン左翼後旗の7つの村を対象に聞き取り調査及びSkype国際電話による深層インタビュー調査を行った。