例会

2018.03.04例会

2017年度 例会

2017年度第三回例会

日時:3月4日(日)14:00~16:00

会場:早稲田大学26号館大隈記念タワー702教室

(参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)

司会:久保田裕之(日本大学)・中西泰子(相模女子大学)

報告者:庄司洋子(立教大学名誉教授)・深田耕一郎(女子栄養大学)

討論者:藤間公太(国立社会保障・人口問題研究所)


社会的養護施設と退所後の困難

日本の社会的養護は大きく施設養護に比重が置かれてきたことが批判的に取り上げられ、里親委託率を上げるべきとの議論がなされている。 たとえば、2010年、国連子どもの権利委員会は日本政府に対して「親の養護のない児童を対象とする家族基盤型の代替的児童養護についての政策の不足, 家族による養護から引き離された児童数の増加,小規模で家族型の養護を提供する取組にかかわらず多くの施設の不十分な基準、 代替児童養護施設において広く虐待が行われているとの報告に懸念」を示す勧告を行っている。 これに対して、政府は2017年、現在2割未満である里親委託率を7年以内に75%以上とするなど具体的な数値目標を設定することになった。 他方でまた、施設養護においてもより家庭的な養護をめざして、小舎化など様々な変革が試みられてきた。 しかし、施設であれ里親であれ、社会的養護は18歳(延長されれば20歳まで)で措置が終了すると、現実には様々な困難に直面するにもかかわらず、 とたんに「大人」として自立することが求められてしまうことの困難が指摘されている。これは、家庭で育った子どもが18歳を越えてもかなりの長期間、 両親からの有形無形の支援を受け続けることと対照的である。この点、藤間公太(2017)は、 施設退所後に彼/女らが内面化した「自立しなければならない」という規範が、かえって施設や仲間との接触を控えさせ孤立の遠因となっている可能性を指摘している。 そこで、今回の例会では、2016年に東京都北区でNPO法人「学生支援ハウスようこそ」を立ち上げ、 養護施設退所後のサポートのためのシェアハウスを開設した庄司洋子氏(立教大学名誉教授)と、 ともに運営に関わる深田耕一郎氏(女子栄養大学講師)を招き、日本における社会的養護施設と退所後の困難について議論を深めたい。

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2017年度第二回例会

日時:12月2日(土)14:00~16:00 会場:早稲田大学文学部戸山キャンパス36号館682教室

      (参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)

報 告 者:上村泰裕氏(名古屋大学大学院)

報告題目:「東アジアの福祉ギャップ――少子高齢化のなかの家族と国家」

要  旨:

東アジアの後発福祉国家(典型としては韓国や台湾を念頭に置いているが、 日本や東南アジア諸国も典型との比較で捉えることができる)でも少子高齢化が進んでいるが、 そこでの家族の経験は先進諸国の場合と同じだろうか。もし異なるとすれば、それはなぜだろうか。 本報告では、まず東アジアにおける福祉国家の成り立ちの特徴を説明したうえで、 それが家族の経験にいかなるインパクトをもたらしつつあるかを検討する。 具体的には、韓国における老親と成人子の関係、および台湾におけるワークライフバランスの事例を取り上げ、 それらと福祉国家の特徴との関連を探りたい。韓国では、老親扶養の規範が衰退する一方、 公的年金の成熟が遅れており、結果として高齢者の貧困率が高くなっている。 また、台湾では、女性の労働力化が日本以上に急速に進む一方、公的な乳児保育サービスの整備が遅れており、 祖父母による私的保育への依存と、日本以上に急速な少子化の進展をもたらしている。 これらの知見は、福祉国家の十分な支えなしに進む個人化が持続可能でないことを示唆している。 こうした問題は後発福祉国家にある程度共通のものであり、国際比較における日本の位置を考えるうえでも参考になると思われる。


討論者:宮坂靖子氏(金城学院大学)

司会:佐藤宏子(和洋女子大学)

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2017年度第一回例会

日時:5月14日(日)13:00~16:00

会場:早稲田大学26号館 302教室

      (参加費:会員は無料、一般非会員は500円、学生非会員は100円)

司会:南山浩二(成城大学)・久保田裕之(日本大学)


報告者1:田中 茜(東北大学大学院)

報告題目:「女性の就業行動の規定要因――個人内における選好の変化に着目して」

要  旨:本研究の目的は、女性自身の仕事と家庭に関する選好が変化することに着目して、 結婚・出産期に生じる退職のメカニズムを明らかにすることである。既存の社会調査データの二次分析により、 選好の変化の規定要因および、就業行動の変化との関連を検討した。分析の結果、結婚によって選好が大きく変化すること 、その変化が離職に影響を及ぼすことが明らかになった。さらにライフステージごとに望ましい働き方は変化し、 就業継続の中にも労働時間や労働場所、復帰のタイミングなどによって多様性があることが確かめられた。


報告者2:森中 典子(お茶の水女子大学大学院)

報告題目:「妻の生活満足感と仕事充実感に対する夫の家事・子育て参加の影響」

要  旨:本研究の目的は、夫婦間の家族役割分担が、妻の生活全般や仕事に対する主観的評価に どのような影響を及ぼすのか、経年変化を捉えながら明らかにすることにある。夫の家事・子育て参加が妻の生活満足感と 仕事充実感に与える影響、ならびに夫の家事・子育て参加の規定要因について、既存パネルデータの二次分析により検討した。 結果、夫の家事・子育て参加の影響は、子どもの成長に応じた家庭内需要の変化により異なること、 妻の職業的地位が高いほど夫の家事参加が低いこと等を明らかにした。


報告者3:相川 頌子(お茶の水女子大学大学院)

報告題目:「日本人の父親の家事・育児役割意識――渡米前後の二時点調査から」

要  旨:本研究の目的は、父親の家事・育児の役割意識は渡米前後でどのように違うのか、 明らかにすることである。日本から米国へ赴任・留学する父親を対象に、渡航前と渡航後二度のヒアリング調査を実施した。 結果、渡米後、諸外国の父親と交流する機会を多く持った場合に育児へのコミットメントが強まる傾向にあった。 また、同僚が現地採用の従業員である、日本(本社)との関わりが少なく専門化された業務である場合に、 家事・育児の役割意識が高まる傾向にあること等が明らかとなった。


報告者4:山本 菜月(お茶の水女子大学大学院)

報告題目:「男女大学生の子ども願望を中心とした将来像――日独比較を通して」

要  旨:教育から職業へと移行する途上の段階である日独両国の学生は、どのような将来像を持っているのか、 特に家族形成に対してどのような希望を持ち、そうした願望が何に起因するかが本研究の目的である。 量的・質的な二種類のデータを分析した結果、ドイツの学生は自身の価値観等に基づいた将来像を持つ一方で、 日本の学生は親の影響を強く受けた将来像を形成し、特に消極的な家族形成を行っていることが明らかになった。


報告者5:呉 静凡(お茶の水女子大学大学院)

報告題目:「「腐女子」の経験とジェンダーの関係性 ――「女の視点」から見る「異性愛」の作用に着目して」

要  旨:本稿は、いわゆる「腐女子」という女性オタクが日常生活において経験したこと、 感じていることと、ジェンダーとの関係性ついて考察を行う。15名の「腐女子」を対象に、 半構造インタビューを行い、彼女たちが自分とほかのカテゴリーの人たちを区別する際に 、何を、どのように語ったのか、「腐女子」の経験を語ることによって、 どのような「女」としての経験が引き出されたのかを分析する。分析の結果、 調査協力者が「腐女子」として感じた疑問、不愉快などの思いは「ジェンダー秩序」と関係していることが分かった。