例会

2013.03.30例会

2012年度 例会

2012年度第三回例会

 次回の研究例会は、「青井和夫先生・大塩俊介先生の家族研究から学ぶもの」を テーマに、本学会に多大な貢献をされた青井先生と大塩先生の追悼例会として開催い たします。青井先生は2011年12月21日に、大塩先生は2012年6月22日にご逝去されま した。お二人のご研究について、田渕先生と岡元先生からご報告いただきます。ま た、前会長の渡辺先生にも青井先生のご研究についてコメントをいただきます。年度 末のお忙しい時期かと思いますが、多くの会員のみなさまのご参加をお待ちしており ます。


日時:2013年3月30日(土) 14:00 ~ 16:30

会場:明治大学駿河台キャンパス・リバティータワー1065教室(6階)

司会:久保桂子(千葉大学)


報告者1:田渕六郎(上智大学)

討論者:渡辺秀樹(慶應義塾大学)

報告題目:青井和夫先生の家族/ライフコース研究

要旨:青井和夫先生(1920~2011)は小集団、家族、生活構造、福祉など広 い分野にわたる研究を展開し、戦後日本の社会学の発展に大きな貢献を果たされた研 究者である。本学会の発展が青井先生のお力に負うところ大であるのは言うまでもな いが、我が国の家族社会学研究に対して青井先生が与えた影響も多大なものがあると 考えられる。しかし、単著として公刊された家族研究が『家族とは何か』(講談社現 代新書、1974年)に限られていたこともあってか、青井先生の家族/ライフコース研 究に対する貢献はこれまで十分に理解・評価されてきたとは言いがたいように思われ る。本報告では、青井先生の数多いご業績をたどり、家族研究における「青井理論」 がどのようなものであったのかを捉え返しながら、現代の家族/ライフコース研究が そこから学ぶべきものが何かを論じてみたい。


報 告 者2:岡元行雄(兵庫県立大学)

報告題目:故大塩俊介東京都立大学名誉教授―家族社会学研究の足跡と人物像 要旨:昨年9月に池岡先生から大塩先生ご逝去の報を受け、驚きと無念の思 いを抱いた。私にとって大塩先生は東京都立大学大学院の恩師であるが、ここでは理 論社会学者である大塩先生の業績全体をご紹介するのではなく、家族社会学に限定し て諸先生方のご教唆を得ながら足跡を辿る。 大塩先生の略歴は、昭和22年9月東京大学文学部社会学科を御卒業され大学院を経て 昭和23年東京大学文学部副手、昭和24年助手、昭和26年横浜国立大学学芸学部専任講 師、昭和28年に東京都立大学人文学部助教授に着任されている。都立大学には同年に 磯村英一教授が着任され、昭和30年には小山隆教授が着任、家族問題研究会を立ち上 げられた。以後、都立大学では磯村先生、小山先生が実証研究でリードされ、大塩先 生もその影響を受けられ理論研究から実証研究へ軸足を移していかれたと推察している。 実際、その後の大塩先生の業績も家族や都市の研究が目立つようになっている。昭和 30年「伊豆伊浜部落の村落構造」(共)、昭和31年「離婚の意味」、昭和32年家族問題 研究会「都市における家族意識の型」発表、昭和35年「個人から世帯へ-世帯統計の 意味と問題点」、昭和37年「教育機能の崩壊からみた解体家族の事例」などである。 大塩先生のお人柄については、当日お話ししたい。

--------------------------------------------------------------------------------

2012年度第ニ回例会

日時:2012年11月17日(土) 14:00 ~ 16:00

会場:明治大学駿河台キャンパス・リバティータワー1085教室(8階)

司会:松木洋人(東京福祉大学短期大学部)

討論者:清水浩昭(日本大学)・千田有紀(武蔵大学)


報告者:施 利平(明治大学)

題目:戦後日本には核家族化と双系化が起きたのか?

要旨:戦後日本では家族社会学の通説とおりに、核家族化と双系化が起きたの か。本書は80年代以降の近代家族論で欠落してきた家族の制度的側面を改めて取りあ げ、家族・親族を家族の制度的側面と関係的側面の双方から捉える枠組みを提示した うえで、主として日本家族社会学会が実施した全国家族調査のデータを用い、核家族 化と双系化の検証を行った。本発表では、主に近代家族論が家族社会学にもたらした 影響と、実証研究からみえてきた家族生活の実態を報告する。

--------------------------------------------------------------------------------

2012年度第一回例会

日時:2012年4月21日(土) 13:30 ~ 17:00

会場:早稲田大学文学部戸山キャンパス34号館355教室

司会:千田有紀(武蔵大学)・永井暁子(日本女子大学)


報告者1:潤間嘉壽美(法政大学大学院修士課程修了)

報告題目:「戦間期日本の都市下層女性における<家庭/母役割>の形成 ―託児所保育事業の論理と実践に着目して」

要旨:近代家族モデルの要に存在する女性の<家庭/母役割>は、いかにして階層を越えて女性全体を覆う規範となりえたのか。本研究では、戦間期日本の都市下層の働く母に焦点をあてて、 <家計役割>と<家庭/母役割>の間に顕現化した矛盾と葛藤を探り、さらに、<家族の正常化>のための両役割の共存という文脈に位置づけられた託児所保育事業において、これらの矛盾と葛藤に どのようなかたちで整合が試みられたのか、戦間期託児所の事例分析を通して考察した。


報告者2:本多真隆(慶應義塾大学大学院)

報告題目:「<愛>・<和>・<情> ―近現代日本家族と花柳界・親密性再考」

要旨:近代家族の特徴とされる「情緒性」は一義的に把握できるものだろうか。明治以来、「情緒性」は多様な語彙で語られてきた。本稿は「花柳界」にまつわる言説を通して、 近現代日本家族の「親密な関係性」を考察する。花柳界は戦前の「家族制度」の情緒の象徴であり、性愛の機関でもあったと示唆する言説は多く、本稿のテーマにとって重要な素材となる。 表題の<愛>・<和>・<情>とは、本稿が見出した、「家族」の「親密な関係性」を表す言葉である。


報告者3:松沢慶子(日本女子大学大学院)

報告題目:「2000年代以降「若者問題」論の系譜と問題把握 ―社会的排除論による統一的把握の可能性をもとめて」

要旨:小論の目的は、2000年代以降に政策的支援の必要性が提起された「若者問題」論を、構築主義パースペクティブから分析し、それらがどのような言説を通して「構築」されているのかを明らかにする事である。 その分析結果から、日本の「若者問題」論はとりわけ「実例の不在」を引きずったままメンタルレベルの政策が講じられた、と考察した。この「実例の不在」を克服するために、「社会的排除論」から「若者問題」の把握を試みるための、検討を行った。


報告者4:三樹尚子(日本女子大学大学院)

報告題目:「夫婦関係の継続性を探る ―専業主婦の語りから見た<再帰性>と<平等性>の視点から」

要旨:本研究は、夫婦関係が困難を伴いながらもなぜ継続していくのかという点について明らかにするものである。まず「夫婦関係の解消は容易になった」と主張する「家族の個人化」と「純粋な関係性」の議論を改めて見直した。 その上で両議論が「家庭内の抑圧から解放すべき立場」と唱える専業主婦にインタビューを行うことで<再帰性>と<平等性>というキーワードを明らかにし、現代社会における夫婦関係の特徴と関係継続のメカニズムについて論じた。


報告者5:山本真知子(日本女子大学大学院・日本学術振興会特別研究員)

報告題目:「里親家庭における実子の意識と里親家庭支援のあり方」

要旨:本研究は、両親である里親や委託児童とともに生活する実子が里親家庭でどのような意識を持ち生活を送ってきたかを明らかにし 、日本において里親家庭の実子を含めた里親家庭支援のあり方を検討することを目的とした。1年以上里親家庭で生活したことのある11名の実子へのインタビュー調査から、 実子が様々な葛藤を持ちながら生活を送っていることや里親制度から実子への説明や支援が見落とされていることが明らかになった。


報告者6:高丸理香(お茶の水女子大学大学院)

報告題目:「日本人海外駐在員妻の生活適応感」

要旨:本研究は、夫の海外転勤に帯同した妻が現地生活のなかで「駐在員妻」として適応していくプロセス、および、それを規定しているメカニズムを包括的に捉えることを目的とした。 協力者20名の語りデータを分析し、理論モデルを構築したことで、これまで曖昧なまま使用されてきた概念を定義することが可能となった。また、「日本人」駐在員妻ならではの特徴を見出し、 現地の日本人社会が「妻」を包摂していくメカニズムを示すことが出来た。


報告者7:三木麻美(日本女子大学大学院前期博士課程修了)

報告題目:「スポーツにおけるジュニアエリート教育の可能性と限界 ―タレント発掘・育成事業の参与者の意識から」

要旨:子どものスポーツ経験は昨今多様化している。出会ったスポーツ種目において、将来的には競技スポーツとして志向する子どもがいる一方で、 気晴らしや楽しみとしてスポーツを望む子どもがいる。スポーツエリート教育を受ける子どももそういった選択を自由に行えるのであろうか。本研究は、 金メダリスト輩出を目的として行われている「タレント発掘・育成事業」に着目し、現在のスポーツエリート教育の可能性と限界を明らかにしていく。